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2008/05/10


米国: 米国ワイン産業(3)

redOrbit

業界の構造変化は発酵されつつある適法の土壌から起こる

ワインの小売チャネルはまた、流動的だ。ワインはコストコからセイフウェイ(Safeway)、そして新たなワイン専門チェーンまで、小売の品質を測る物差しとなっている。セイフウェイではワインは2番目に成長している利益源となっており、特に1本$20ドル以上の商品の売上は、2006年、70%以上も増加した。さらに、食品小売業者は、ワインと他の製品の間に強い補完関係があることに注目している。ワインを買う人は、最終的に他の品物に関しても高い買い物をしている。すなわち、カヴェルネ・ソーヴィニョン(Cabernet Sauvignon)を買えば、ハンバーガーの代わりにヒレ肉を買い、一般により高級なものを買う(※8)。市場調査によれば、ワイン1本に13ドルをかける場合、買い物金額全体は30ドル増加するという。

ワインに関する需要供給に関する適当な研究はほとんどないが、数少ない調査によれば、低価格のワイン(750mlあたり6ドル以下のワインや本当に低価格の5リットルボックスワイン)は、価格が上がれば、必ず売上は落ちる。従来通りの期待通りの結果だ。しかし、より高級なワイン(750mlあたり20ドルかそれ以上)では、価格が上がれば売上もしばしば伸び、高価なワインは典型的な高級品であることを示している(あるテスティングルームで60ドルのワインと40ドルのワインを並べたが、60ドルのワインはよく売れた結果、45ドルのワインは全く売れなかったという。次に価格が52ドルにあがった時には、中身は何も変わらなかったにもかかわらず売上は飛躍的に伸びたという。)。(品質を一定にした場合)高価格であることが、ワインに威信やステータスを与えているようだ。

ほとんど全てのレストランは、扱っているワインで差別化を図ろうとしており、ワインは主要な利益減となっている(しばしば卸価格の4倍以上の利幅乗せている)。グラスワインはマーケティングと利益の面から特に重要なアイテムになってきており、顧客の報告によれば店舗で飲むワインの74%はグラスワインだそうだ。レストランはよく、グラスワインを販売する際の価格で、ボトルワインを買っている。普通、750mlボトルからは5杯のワインが提供される(※9)。彼らの利益を計算してみてください。

話を戻せば、ちょうど米国成人の12%、最低週に1回ワインを飲む米国ワイン消費人口の26%が、米国内ワイン売上の2/3近くを占めている。これは、ワイン業界が時間をかけて本当のワイン市場を米国に作り上げたことを意味しているが、さらなる成長の余地も残していることもわかる。

なぜ、誰もワインビジネスを始めないんだろう?小さいが品質の良いワイナリーを持つ友人の説明によれば、「これは毎年新たな謎を解決しているようなものだ。そしてその謎には答えはなく、いつも答えが変わっている。」 ワインは浪漫であり、喜びであり、自然であり、歴史である。ある映画のなかでは「ワインは生き物だ。」 そして、ワインを作ることは、素晴らしい人生になる。ワイン業界は情熱を追い続ける人々によって動いている。自分の仕事を愛している人達と働くことはためになる。

ワイン・ビジネスで「経済学をする」

このクレイジーで、情熱的で、整備されていない業界の経済学者はどのような感じなんだろう?

取っ掛かりとなるデータは無い。ある実験をやってみよう。2番目に大きいメーカーで、数少ない株式会社である Constellation Brandsを10キロ、手に入れる。実際どのくらいのワインがConstellation Brandsによって作られているのだろう?(分かりきった)ドル単位ではなく、ケースやガロン単位で。これは引っかけ問題だ。答えはない(※10)。他のどの業界が作ったものを機密情報としているだろう?民間会社から情報を得るのがどのようなものか考えてみよう。データのない経済学者とは何だろう?

ワイン業界におけるコンサルティングビジネスの主要な部分はリサーチだ。情報をシェアするために尋ねたり、おだてたり、説得したり。やっと聞き出した内容をつなぎ合わせて、我々が描く絵から業界自身が業界全体を理解するのを助けている。我々の会社は、データを求めて、データを理解するところだ。

我々はワイン直販に関する業界標準調査を行い、地域ごとの出荷のトラッキングをして業界の主要な直販会社との仕事をしている。InfoScanや世帯パネル会社、小売業者や流通業者や輸入業者、その他業界組織と協業して、さまざまな製品の市場全体図を作り上げている。 2005年、業界の消費者調査の品質にいらだって、私(と前の会社)は1年を費やし、Yankelovich Partnersをこの業界に案内し、彼らがCalifornia's Wine Instituteに対し、米国消費者行動やワインの認知調査プロジェクトを遂行するのをマネージした。昨年、前のグループ会社と協力し、14州の経済効果調査と合わせて、ワインの経済効果(Economic Impact of Wine)、米国経済におけるブドウとブドウ製品( Grapes and Grape Products on the American Economy)を行った。この調査は、この種のものでは初めてだった。過去になされてきた研究の大部分は、米国農務省のブドウ生産データをもとに推定したものであり、その他は、僅かなTTBからの量的データ(州による「ワイン」に限らない発酵フルーツの総量)や、消費税、そしてトラッキングデータだ。ワインは「グラスの中のブドウ」と呼ばれているが、問題はワインがそれら数字では十分ではない複雑な製品であることだ。ブドウを植え、ワイナリーを作り、ブドウを収穫した後、ブドウは特別仕様の「ゴンドラ」で運ばれ、大きく効果な設備でつぶされる。そして、高価なタンクや樽の中で最大3年寝かされ、個別にデザインされたラベルや栓のされる効果なボトルに入れられ出荷される。その後、ワインは特別な倉庫に保管され、特殊なトラックで何マイルも離れた別の倉庫、貯蔵庫、トラックまで運ばれ、流通業者や小売業者、レストランにより(その多くが)手売りされる。

影響調査は大体、直販に関わる法律から移民問題に関する税金の変更までの様々な政策変更に直面している、州や地域のワイナリー組織向けに行われることが多い。National Grape and Wine Initiativeには全国影響調査を委託された。全ての調査はこれまでスポンサーによって発表されてきた。ブドウは第6位の生産高の作物であり、果物では第1位であるが、先にも述べたように、ワインに関する調査と教育に費やされる費用は年間4,500万ドル以下であり、大部分は州政府と民間企業から提供されている。

ブドウ栽培とブドウ酒醸造に関するより多くの調査が必要とされているだけではなく、業界にはスキルのある人材が不足している。また、米国にはブドウ栽培とブドウ酒醸造の学位の取れるプログラムは、コーネル大学が東海岸で初めてブドウ栽培のプログラムを始めたのを含めて、僅かに一握りしかない。ブドウ園労働者には、高いスキルが要求される。労働者は主にメキシコや中央アメリカからやってくるが、季節労働者でもなければ、低賃金労働者でもない。したがって、移民政策はこの業界にとって非常に重要だ。

我々のビジネス一部は、ワイナリー、供給者、投資家に対する守秘のアドバイザリーサービスだ。プロジェクトには市場調査やデューデリジェンス、市場・製品開発戦略、ビジネスプラン、オペレーション・財務概況が含まれる。また、業界の上級管理職向けの主要イベントや、数多くのワークショップを年間を通して開催する。

生産、流通、売上のデータが不足していることに加え、業界はマネジメントや計画、情報収集にあまり投資をしたがらない。会計制度には、大掛かりな整備が必要だ。在庫管理は未だExcelで行われている。顧客情報管理はワイナリーでさえメーリングリストで行っている。マーケティング予算のほとんどはラベルデザインやPR活動にまわされている。ワイナリーのオペレーションはここ数十年ほとんど変わっていない。フィールド・オブ・ドリームズを夢見て、ビジネスプランなしにワイナリーを建設する人達は、映画だけの話ではない。

一方、国中で売られる3億ケースのうち5,000ケースを生産しているワイナリーが、業界・市場調査に投資をしないことは合理的かもしれない。というのも、彼らの顧客が一握りの得意客とワインクラブであるからだ。ITのニーズは限られている。しかし、これは10万ケースや50万ケースを生産しているワイナリーの場合は非合理的だ。主要なワイナリーグループが一級の管理手法を開発している一方、まだ改善を必要としている企業はたくさんある。

結論

Stonebridgeでの全ての活動は共通の目的を有している。ワイン業界が享受でき期待する、調査、分析、アドバイザリーワークの質を上げること。我々は、米国ビジネスが品質と収益性改善のためにここ数十年かけて築いてきた、サプライチェーン・マネジメントから戦略マーケティングや情報マネジメントまでの経済的・定量的ツールを、ワイン業界に持ち込み始めている。この試みは、農業やファッション、化学、情熱、伝統、資本の上に成り立っているこの不安定で変化の中にある業界では、非常に大きな挑戦である。他に同じようなものがあるとしても、それが何であるか我々は知らない。

(※8)頭のいい人は、関連性はあるが因果関係ではないのではないかと思うかもしれない。高級ワインを買うからといって、ヒレ肉を買うだろうか?もしくは、ヒレ肉を買うからといって、高級ワインを買うだろうか?これまでわかっているところでは、食料品店がより高品質のワインを置けば、その他製品の売上も、逆に大きく上がるということだ。とにかく、これは店舗にとってはお得である。

(※9)小売店で20ドルのワインは通常、レストランでは13ドル、ワイナリーでは10ドル、流通業者では3ドルで買える。

(※10)例えば、誰も実際のワインの販売量は知らない。見積もりデータは、スキャンデータと呼ばれるPOSのバーコードデータからのものや、部分的な調査によるものだ。流通業者は、在庫から売りに出た「ディプリーション・データ」を持っているが、これは一般に入手可能なものではなく、さらに生産者はそのディプリーション・データを流通業者から買い、他社のデータを除かなければならない。また、食料品チェーンのスキャン・データを除いては、どのように小売店やレストランで最終的に売れているかや、その総価格や総量もわからない。州はある程度の税情報は持っているが、在庫が小売チャネルに移る際の平均の数字でしか把握できない。

(※7)例えば、Kendall Jacksonは既に、独自の流通会社を開発しており、「提携パブ」に禁酒法が及んでもやっていけるくらいになっている。

出展:Business Economics - バーバラ・インセル(ストーンブリッジ・リサーチ・グループCEO: ストーンブリッジは、カリフォルニア、ナパを拠点とするワイン業界コンサルティングファーム)





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