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2008/05/08


米国: 米国ワイン産業(2)

redOrbit

ワインは競争が激しく、ブランド重視であり、高級顧客向けビジネスだ

2007年、酒類タバコ税貿易管理局は、輸入を含む全ての産地からのテーブルワインに対して、6万7千以上のラベル(専門的には、ラベル承認証明書[COLAS])を承認した(※4)。市場競争の他の指標を使えば、ニールセン・カンパニー(Nielsen Company)の見積もりによれば、流通している食料品だけで1万3千のラベルがあり、その大部分をワインが占めている。米国では、食料品チャネルは、全ワイン売上の30%を占めているが、より高級なブランドが売れているワインショップやリキュールストアーはその中には含まれていない。また、 Costco、Wal-Mart、レストラン、バー(その他「店舗施設」など)も同様、含まれていない。実際、米国では、ワインは43万以上の離れた場所で売られており、そのうち28万7千は店舗施設だ。

同時に、ニールセンの調査よれば、新たなブランドを立ち上げ・吸収したり、顧客のフォローアップをしたり、互いに買収しあったりしているが、上位10メーカーは最近過去10年に継続的にマーケットシェアを失っているという。マーケットシェアを得ることで、卸業者からより良いサービスを受けることができ、棚面積を広げることができ、営業部隊やマーケティングチームに更なる機会を提供でき、量を売ることで諸経費を吸収することができる。大手企業は合併を続けている一方、新たな、小さいブランドが立ち上がり、マーケットのフラグメンテーションが進んでいる。過去10年の市場の成長は、新たなブランドやちょっと前までは認知されていなかった生産者によるものだ。

面白いワイン業界の知識としては、ワインには非常に規制が多い。米国は、とりわけ、禁酒国家だ。アルコール飲料業界は憲法改正の対象とされてきた唯一の産業であると、よく言われる。制約という点では、米国は51の独立した法的機関(50の州機関+コロンビア特別区)があり、それぞれは個別の法・条例を持っており、そうした状況は近年、最高裁判所に達するまで、司法の注意を引いてきた。

合衆国憲法第23修正で、禁酒法は終わりを告げたが、アルコール飲料の規制は引き続き州法に委任された。したがって各州は、メーカーが製品を売り、小売業者やレストランが商品を買う対象となる「卸業者/流通業者」を許可制とすることにした(※5)。多くの州はこの「3層システム」を導入し、出荷や広告、価格公表や卸や小売の競争を効率的に妨げるための契約を管理している。流通業者は、通常、州に納める消費税を集め、所有者が代わる際にレポートを提出している。ほとんどのワインは「手売り」で1つ1つ売られるため、ワイン流通とは、ロジスティクスと販売の両者をさす。流通業者は、在庫としてもつワインの所有権を持ち、それを小売やレストランに渡す責任を持たなければならない。ワインは従来より他の飲料に比べ、引渡すのに長い時間がかかる。小売店舗のビールであれば1日で済み、他のアルコール類であれば1ヶ月だが、ワイン在庫は、3−6ヵ月かかる。ある流通業者はそれらワインに、倉庫に座って本を読みながら、「入荷されて、そこに居座る(ファースト・イン、スティル・ヒア)」という特別な表現をしている。しかし、27の州においては、大部分の流通業者は子会社や関係会社、協力会社を通して、うまくやり取りをしている。流通業者の総数は、吸収・合併を繰り返し、1995年の 7,000から、770に過ぎない子会社、関係会社、協力会社にまで減少した。もっとも信頼できる数字によれば、大手4流通業者が、流通している米国ワインの40%をコントロールしており、その割合は増加しているという。多くの州では、たった2社が市場を占有している。

何千もの輸入製品とともに、5,000の国内メーカーがあり、それらをあわせると何万のブランドとなり、一握りの流通業者が40万の販売拠点を扱おうとしている。決して簡単なビジネスではない。

これら全てがワイン販売の仕組みとと数多くの訴訟のポイント、最高裁での前例(※6)を説明している。この3層構造は、ワイナリーが市場の絞り込みをしなければならない、狭い漏斗構造を作り出しているだけでなく、マーケティング戦略を複雑にしている生産者-顧客間の障壁を生み出している。

他業界の多くの人々はワイナリーの直販はEコマース関連であると思っているが、Eコマースは直販のうち、わずか6−7%にすぎない。実際、直販はその半数が行われているテスティング・ルームで推し進められており、そこでほとんどの人はワインクラブやメーリング・リスト、その他主要な直販源に登録している。

今日、米国消費者が他業界で市場やシェフを訪れているように、ワイナリー直販の多くは、顧客がワイナリーを訪れてワイン生産者と会話をしながらの販売である。ワインや料理を楽しむ旅行は、米国中で増大しており、50全ての州でワイン産業の発展を促している。2005年、ワイナリーは2,700万人が訪問しており、その数は安定して伸びている。

ワインにおけるEコマースは、小売業において発展する可能性がある。米国顧客は多様なワインを消費しており、頻繁にワインを買う顧客は1回の購入で6−11種類のブランドを試している。ブランド・ロイヤリティーは、特に若年層では低い。ワインクラブメンバーシップはワイナリーにとって非常に大事である一方、それらはより小さい顧客セグメントへ進出しており、18ヶ月くらいのうちには他のブランドへ移る傾向にある。この業界は変化の真っ只中にある。

小売での最初の引き金は、たぶん、2003年に提訴されたコストコ(Costco)のワシントン州種類監理委員会(Washington State Liquor Control Board)に対する訴訟で引かれた。コストコは、州法の多くが企業の競争を妨げ、消費者利益に反していると訴えた。コストコは、最初の申し立ての内容と、幾つかの規制問題と略式判決で勝利し、その申し立てとは、小売業者が流通業者からの調達を強制されることで消費者の選択を狭め、自由な競争を妨げているという内容であった。この裁判はまだ連邦政府が上告中だ。

流通は、ロジスティクスと同様、規模の経済だ。ワインを調達し、「大型」店や大型チェーンに流通させることで、規模の経済の恩恵を受けることができる。業界の誰もが、大手メーカーや小売、レストランチェーンは簡単に「自己流通」できることに気づいている(※7)。しかし、流通業者はそれら企業を必要としている。そして、面白いことに、流通業者に不平を言うのは、それを最も必要としている小規模メーカー、小売業者、レストランだ。顧客直販いかに重要であっても一定の販売量であるため、小売店舗は年間1万ケース以上を生産するワイナリーにとっては必要不可欠だ。小さいワイナリーはレストランに商品を置き、商用にブランドが認知されることが大事であることを知っている。また、小さいワイナリーは、数千もの異なる店舗には商品を提供できない。個別のレストランや小売業者も国内外の数千ものメーカーと取引することは難しい。

流通業者も、互いに競争をしており、州の流通業者の競争を妨げるために作られた様々な州法・条例の規制をひっくり返そうとしている。

(※4)米国には5,400のワイナリーとさらに輸入されてくるワインのワイナリーもあり、ワイナリーは品質と価格で差別化を図るために品種や地域ごとに異なるラベルを貼り、各ワインには数多くの品種が存在し、多くのワイナリーはブドウの原産で品種を分け(ブドウ園、ワインごと)、あるワインにはその時々で市場に1つ以上のヴィンテージが存在する、ということを思い出して欲しい。

(※5)規制制度システムは、実際はこれよりもっと複雑だが、ここでは省略する。

(※6)最高裁は、全ての州がワイナリーのワインの入出荷を許可する公平な機会を作るよう裁定した。流通業者が直販を生存の危機と感じており、州議会ごとにせめぎ合いが続いていいる。

(※7)例えば、Kendall Jacksonは既に、独自の流通会社を開発しており、「提携パブ」に禁酒法が及んでもやっていけるくらいになっている。

米国:米国ワイン産業(3)へ続く

出展:Business Economics - バーバラ・インセル(ストーンブリッジ・リサーチ・グループCEO: ストーンブリッジは、カリフォルニア、ナパを拠点とするワイン業界コンサルティングファーム)





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