2009/03/29

テスラ発の『高級グリーンカー』という選択

テスラモータース（Tesla Motors）が遂に、セダンタイプ電気自動車の『Model S』を発表した。同社によれば、『Model S』は、環境にやさしい高級車の新たな選択肢となり、石油輸入に頼る自動車産業の助けになるであろうという。

『Model S』は、高速道路も走れる世界初の量産型電気自動車であり、１回のチャージで３００マイル（約４８３キロメートル）を走ることができる。価格は米国内で約57,000ドル（約５５８万円）で売り出される予定だ。

ロサンゼルスでの発表の際、テスラの創始者で最高責任者のElon Musk氏は、2011年までに、この車を生産ラインに乗せることを目標としていると述べた。同社は、１年に20,000台の車を生産する計画である。

しかし、テスラはまだ、このプロジェクトのための資金は確保できていない。同社は、昨年認可された米エネルギー省から自動車業界への２５０億ドルの緊急援助計画から、3億5,000万ドルを借り入れる交渉に自信を見せている。米政府によるこの緊急援助計画は、自動車メーカーがより燃費効率の良い自動車を作るための支援を主な目的としている。

Musk氏によれば、テスラ氏は、南カリフォルニアに製造工場を建設する契約も締結間近であるという。

昨年同社は、計画の遅れと値上げの末に、２シートのロードスターモデルを発表した。この車は、ロータス・エリーゼ（Lotus Elise）をモデルとしたものであり、英国で製作された。また、価格は10,9000ドル（約1,070ドル）であり、そのスタイリッシュなデザインは多くの賞賛を得たが、これまで３００台ばかりが市場に出されただけである。1000人以上が、いまだ生産待ちの状態である。

『Model S』は５人乗りであるが、トランクに後ろ向きの２つのチャイルドシートがあり、また、動力はリチウムイオンバッテリーである。

バッテリーの充電は、４５分のクイックチャージか、４時間のフルチャージのどちらかが可能である。車のダッシュボードには、大きなタッチスクリーンがあり、３Ｇネットワークに接続できる。また、この車は、走り出しから６秒で時速６０マイルに達する。他の量産セダンに比べれば価格は高めだが、税制上の優遇措置や、比較的低価格なメンテナンスコスト、燃料コストが無いことを考えれば、競争力は維持できるとテスラは述べている。

テスラによれば、このモデルは、「北米やヨーロッパの環境に関心があり、先見の明のあるドライバーの新たな選択肢」となるとのことだ。まずは、北米とヨーロッパ市場での販売を進め、2012年にアジア市場に販売を拡大する予定だ。

Musk氏によれば、生産拠点を確定した後、生産開始までには２４ヶ月から３０ヶ月がかかるとの見込みだ。同社は、投資家から1億8,600万ドルの資金を集めており、Musk氏は5,500億ドルを出資している。彼は、PayPalの立ち上げに参画し、eBayに売却した際に大きな収入を得た。他の投資家には、Googleの共同経営者で大金持ちのLarry Page氏とSergey Brin氏がいる。

この車で、石油輸入への依存を軽減できる新たな自動車を導きたいとMusk氏は述べた。

「我々は、リーズナブルな価格で、市場に受け入れられる電気自動車を作ることが可能だということを自動車業界に見せたいのだ。自動車業界が我々に続いてくれることを望んでいる。」と彼は言う。

ゼネラルモータースは、2011年に販売開始を予定している、40,000ドルのセダンタイプの電気自動車「Chevrolet Volt」を現在開発している。トヨタ、ルノー、日産、三菱、タイムラーの「Smart」ブランドは、2011年までにプラグイン型の自動車の販売を開始する計画だ。オバマ大統領は、彼の政権のもと、2015年までに１００万台の電気自動車を公道に走らせたいと述べている。

米国自動車メーカーの売上が壊滅的の中で発表された「Model S 」であるが、業界のアナリストは、米国自動車業界の将来が完全電気自動車であることには懐疑的である。彼らは、ハイブリッド自動車と燃料価格の下落が、完全電気自動車の成長の大きな妨げになると述べている。

カリフォルニアの企業、AutoPacific ConsultingのJim Hossack氏によれば、テスラの最新のプロトタイプは、「技術の驚異」であるが、米国の自動車産業を革新できるかどうかは疑問であるという。「問題は燃料価格である。電気自動車を市場に出したいのであれば、燃料価格の高い市場で行った方が良い」とHossack氏は述べた。

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